2017年9月19日火曜日

資料比較研究

 

~自筆譜の復元を目指して~


2013年に横山版のスラーなし版を一応完成させた後、スラーのある完全版を作成することは当然次の目標となり、試みとして第1組曲全部と第3組曲の一部のスラーあり版を作成をした。しかしその他の組曲についてはなかなか取り掛かれないでいた。

そこへ2016年の終わりに新バッハ全集改訂版が出版されたことは大きな刺激になった。この改訂版については手厳しく批判したが、それは楽譜として多くの部分で進展していないどころか後退さえしてしまった部分があるからで、それとは反対に資料研究の点では進展したところもあり大いに参考になったのである。

とりわけ、これまでケルナーの筆写譜はバッハの草稿から、アンナ・マグダレーナ・バッハの筆写譜はバッハの清書楽譜から写譜されたと考えられて来たのが、実は唯一つの自筆譜に由来しているという校訂者Talle氏の指摘は、様々な点から納得できるものである。しかもその自筆譜も草稿であって、「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」のような清書楽譜は書かれなかった可能性が高いということである。

ともかくぼくとしてはこの改訂版の登場により新たにチェロ組曲のスラーを含めた完全版を作る意欲がわいて来たので、これから各資料の比較研究を公開して行こうと考えたのである。そこでこれまでの資料間の系統図を次のように改定した。
(2018年8月24日、再改訂)


バッハの自筆譜が一つだけになり、その他の資料の配置が変わった。ケルナーの筆写譜をI資料の下に置いたのである。これによりケルナーとG資料の間に直接の関係がないにも関わらず、共通点があることを説明できると思う。I資料はチェリストが実際に演奏するためにバッハの自筆譜から写譜したものであろう。またパリ初版譜の資料となったものをE資料と呼んでいたが、一般にはパリ初版譜をE資料と呼んでいるので混同しないようE0(イーゼロ)資料と呼ぶことにする。

また新たにドッツァウアー版も加えたが、ここに書かれているのは一般に考えられている関係であり、実のところC・D資料、パリ初版譜、ケルナー、ドッツァウアーの関係は疑問だらけであり、これも研究を進めて行くうちに解明されるかもしれない。 


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